

認知症には、脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、その他、病気から起こるものとがある。脳血管性認知症は、脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管性障害を発症し運動マヒを伴った認知症をいう。高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈などの人に多く発症する。アルツハイマー型認知症は、脳細胞が変性することにより発症する認知症である。
患者の脳には、神経原線維変化と呼ばれる神経細胞の変化と、老人班といわれる異常なアミロイドが脳に沈着しているのがみられる。症状が進行していくと同時に脳の萎縮も見られる。
アルツハイマー型認知症は女性が多く、脳血管性認知症は男性が多いというデータがある。
認知症になる原因として、ビタミンの欠乏で認知症の症状を現すもの、手術後のせん妄で急に認知症のような症状を現すもの、病気で一時的に現れるもの、さらに、高齢期のうつ病で認知症と同じ症状を表すものなどがあり、識別が難しい。主な原因となるものを分類すると下記のようになる。
アルツハイマー型 遺伝性、環境、加齢などが複合的原因となって発症するといわれている。
脳血管性型脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、脳血管性は運動マヒを伴った認知症を現す。
記憶障害、失見当識、思考力低下、判断力低下、構成障害、妄想、失語、失行、失認などの症状が現れる。
アルツハイマー型は、記憶障害(物忘れ程度から数分前のことも思い出せなくなる)、失見当識(日付や季節、時間、場所が分からなくなり、出かけて帰れなくなったり、身近な人が認識できなくなる)、思考力低下が特に現れる。症状が進行していくと、運動障害や失禁などがあり、やがて寝たきりの状態になる。
肺炎は命にかかわることが多い。
加齢による感染防御機能の低下。
低栄養、嚥下障害。
認知症にかかわらず、高齢になると女性は膀胱炎、男性は前立腺肥大症になりやすく、尿路感染を起こしやすくなる。アルツハイマー病は尿失禁は少なく、脳血管性には多く見られる。
認知症の人に限らず、高齢になると多くなる。脳を包んでいる一番外側の硬膜と脳との間に出血する。
・転倒して頭部の外傷を避ける。
・白内障など視力が低下している人は物にぶつかって頭をケガしないようにする。
ちょっとしたことでケガや事故を起こすため、特に転倒や転落に気をつける。高齢になり骨がもろくなっているので骨が折れやすい状態になっている。女性は骨粗しょう症が多いので、骨折すると寝たきりないやすいので注意する。
認知症症状や行動として現れるものの上にも、生活歴や生活習慣が深く反映している。自分なりに培ってきた文化を持っていることを忘れないようにする。それらの行動を理解するには、高齢者が生きてきた時代背景や状況を知り、さらには一人ひとりがそうした時代背景のもとで、どのように生きてきたかを理解しておかなければならない。
そうした背景を知れば、同じような症状でも、一人ひとりの違いが良く見え、コミュニケーションがスムーズに行える。コミュニケーションができるようになると信頼が強くなり、情緒的な結びつきが深まり、安心した、落ち着いた行動や友情につながっていく。
その人の身に危険(事故やケガなど)が及んだり、周囲に大きな影響(迷惑など)を及ぼさない限り、その人がなぜこのような行動をするのかという要因を考えていくことが大切である。
年長者として敬意ある言葉、態度で接する。子供のような扱い、態度は結果的に指示的な関わりをしたりして、プライドを傷つけることになる。
認知症高齢者は、知的能力が障害されていても感情、情緒の面は豊かなものがある。その分、自尊心が傷つけられることで、強い抵抗や反発、暴言、暴力行為につながることがある。
また、傷つけられたことに対して理性で抑えず、相手に対して素直に不快な感情を示す。人一倍自尊心が強いという、認知症高齢者のアンバランスな状態を受け止めることが介護者には求められる。
認知症高齢者の自尊心に配慮した関わりは、結局、情緒的に安定をもたらすことにつながる。情緒的に安定すれば、精神症状や行動障害の多くは解消する。したがって、認知症高齢者の生活状況は介護の質を映し出すことになる。認知症高齢者が抵抗したり、反発したり、興奮したとしても、それは認知症高齢者が招いたものではなく、介護者としての対応が適切であったかを振り返ることが大切。認知症高齢者が安らぎを得ているのであれば、それは適切な介護が提供されていることの証拠である。
認知症の症状を緩和させ、本人が笑顔で居心地の良い環境を作るためには生活の仕方が大きな意味を持つことになる。
認知症の症状を悪化させない生活とは、今までしてきた役割、仕事を生活の中に組み込むよう働きかけ、精神的刺激をとおして生活の活性化を図ることが考えられる。間違えたり、失敗したりしても叱ったり、注意したり、侮辱することは無意味。
認知症高齢者は、その人にふさわしい刺激が得られれば、生活を活性化し楽しめる。このような認知症高齢者の潜在化した可能性に介護者の目が向けられることが介護の基本となる。
認知症高齢者の記憶力の特徴として、新しい記憶より比較的古い記憶は残っていることから、その点に配慮し、刺激としては、今まで生活の中で身につけて覚えていることを活用すること。生活歴などのバックグランドを把握しておく必要がある。したがって、個々の特性に応じた選択と対応が求められる。
ユーモアを忘れず、一日に1回は「笑う」ようなかかわり方をする。また、その人の喜び、楽しいと思えることを少しの時間でも思い出して行う。おしゃれにも気配りする。髪はきちんとクシを入れ、ヒゲものびたままにしない。洋服選びから楽しく会話して、おしゃれで、良い気分でいられるように援助する。そのために家族やボランティアとよい関係で協力できるようにする。
他の利用者、職員の関わりを通してコミュニケーションを図って孤独にしないよう、ここが安心できる場所として理解してもらえるよう、最大限の援助をする。
加齢に伴い全身の機能は低下傾向になるので、特に発熱、転倒による骨折や打撲、脱水などについては、介護者が充分きめ細かい観察を行い、予防をしっかりとし、異常の見落としのないようにしなければならない。
認知障害や記憶力の低下は、日常的に転倒、転落、火傷、窒息などのさまざまな事故を起こす危険性に結びつくため、安全な環境への配慮が必要。